暗夜行路のブログ★

ダメ人間のぼやきです。

現代日本の文学47~けものたちは故郷をめざす~

学研「現代日本の文学47“阿部公房・大江健三郎”」

 

どうにも今夜は神経が高ぶって、読書が進まない。

 

・・・・・なので、以前に読んだ本の感想でも一つ書いてみたいと思う。


けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)

けものたちは故郷をめざす (新潮文庫 あ 4-3)

 

 

 

どうにも私は物好きなのか、部屋のなかには一昔前の箱本やら全集がごろごろしている。今回書き込む、現代日本の文学はヤフオクで50巻揃いで落としたものだ。

 

これは去年の10月あたりに購入したのだが、読んだのはまだ17~18巻程度。今のペースで読み進めれば、私が三十路になるまでには読み終えられるが、これからも今のように暇だとは限らないから、どこまで進められるかはわからない。人間が一生に読める本の量なんて、たかが知れていると思う今日この頃。

 

・・・・とまあ、それは置いといて。この書籍には以下の作品が入っている。

 

阿部公房集

けものたちは故郷をめざす

魔法のチョーク

デントロカカリヤ

闖入者

 

大江健三郎

芽むしり 仔撃ち

飼育

不意の唖

後退青年研究所

アトミック・エイジの守護神

 

阿部公房と大江健三郎。この両者が同じ本に纏められた理由に関して、無知な私にはよくわからないが、この書籍に入っている作品は非常に戦争の影が漂う、どこか荒んだ臭いを漂わせるものばかりだ。

 

冒頭にある“けものたちは故郷をめざす”は、満州に移住していた主人公の久木久三が、故郷である日本を目指すために、ハバリンから南の遼東湾まで行く話だ。

 

・・・・この作品は、戦後育ちの私には全くわからない混沌とした、人間の欲望がうずまくけものじみた人々の物語だ。主人公の久木久三は、ロシア軍に占領されたハバリン市内で、そこに住んでいるロシア軍のアレクサンドロフ中尉に、女中同様の扱いを受けて生活していた。しかし、日本人として一人ハバリン市内の取り残された久三は、徐々にその焦りが高じていき、故郷の日本に向かおうと決心するのだった。

 

解説によると、阿部公房の根源的なテーマの一つに「壁」というものがあるそうだ。久三は南を目指すまでに、高石搭という偽名を使う青年に出会い、そして散々な思いをして果てしない原野を二人で歩み、やっと日本の領海までたどり着くことができるのだが・・・・?

 

敗戦後の日本は、果たして久三が想い描いていた楽園のような日本があったのだろうか「降りたって、ろくなことはないんだぜ。浮浪児になって、うろうろごみためを漁るのがオチさ。もうちっと、ここでゆっくり遊んでいくんだな」という船長の言葉には、困難を乗り越えた先には、きっと希望は見えると信じていただろう久三には、信じがたい現実だっただろう。

 

希望があると信じて向かった先には壁が立ちふさがっていた。なんともニヒリズムな展開だが、人間という生き物は、ある種の楽園というものを信じて前に突き進む傾向があるように思われる。

 

旧約聖書の約束の地を目指してカナンの地へ向かうユダヤ人。先住民を駆逐して、自分達の王国を立てたのはいいものの、ソロモンの栄華以降は衰退の兆しが見え始め、アッシリアによって国は滅ぼされてしまう。

 

・・・・しかし、絶望に苛まれて動かないよりも、人間は何かをやってから絶望したほうがいいのかも知れない。何かをやらずに後悔するよりも、何かをやって後悔したほうがいいこともあるのだろうから。とはいうものの、戦後の温室でのうのうと育ってきた人間が、偉いことをいえるような話ではないよなぁ。

 

当時の惨状なんてわからないし、結局甘ちゃんなことしか言えないんだよね。すさまじい話だとは思ったけれども、当時を生きていた人々の考えていたことや感情。それら全てを理解するのは不可能なんだろうな、きっと。

 

・・・・とまあ、たかだか千文字ちょっと書いただけで1時間と20分を消費し、そろそろ寝る時間になっている。まだまだ一作品のことしか書いてないのだけれども。続きは後日、また気が向いたら書こうと思います。